信じてる話
「そうじゃねぇな。どうなってんだ」 いつもの温泉の更衣室でのことだ。おじさんが爺さんのシャツを着せてやっていた。髪を乾かし終えた私も助太刀して2人がかりで着せてやった。 「それじゃ腕が通らねぇよ」 爺さん、今度はジャンパーが上手く着られない。袖が裏返っているからだ。2人がかりで着せてやった。 「済まないな、兄さん」 なんの、明日は我が身ですから。こんなこと一善にもなりゃしない。 私だって可能な限り出歩きたいし温泉にも浸かりたい。いつの日か私が着替えに難儀していたら、若い衆が寄ってたかって手伝ってくれると信じているぞ。 だが、この国は弱っている。頼りの外人さんたちも国に帰ってしまうだろう。2倍3倍は稼げると遥々やって来たのに円が弱って母国に毛の生えた程度の稼ぎにしかならないのだから当然だ。家族と一緒の方が良いに決まってる。更に小学生から英語教育して、万が一にでも高校卒業までにそれが身に付いたとしたら、この国の若者たちは海外に流出してしまうだろう。英語が使いこなせれば日本で働く意味がないからだ。子供は宝だの平等に教育の機会をだの言っても、それが本当にこの国の未来の為になるのか。よその国に出て行かれたら、それまでだろうに。 そんなこんなでどうなることやらだが信じてるぞ、日本。