『ロッキー vs ドラゴ』観て来た話

 『ロッキー4』が公開される前に、今は亡き渋谷の映画館で(古いビルで、右隣が本屋さん、上の階にプラネタリウムがあった。名称失念)「ロッキー祭り」が開催された。それは『ロッキー、2、3』を1週間ごと?に上映してそのまま新作『ロッキー4』になだれ込むって寸法だった。ロッキー・チルドレンの私は当然通しチケットを買って、堪能した。その『ロッキー4』が新編集で帰って来たとなれば、観ない手は無い。
 

 オリジナルは、シリーズ中最も雑な作品だった(あ〜さん調べ)。ゴルビーが、ロッキーの行いとスピーチに感動して、スタンディングオベーションする、それだけだったと言っても過言ではない(あ〜さん調べ)。流石にそれは無い、やり過ぎだとの非難も多くあった。だが、それが当時のスタローンの心情であったのだろうし、世間の雰囲気でもあったのだろう。

 『ロッキーvs ドラゴ』は、実に良く出来た新編集版で、こちらを正史として残して、オリジナルは無かったことにしても良いくらいだ。

 冒頭からアポロが亡くなるまでの前半の流れがとても良くなっているし、なぜロッキーが戦いに赴くのかの動機付けもより強くなっている。前3作を通して、ロッキーとアポロが愛し合っていたことは明らかだったが(精神的にですが)今回、葬儀のシーンでハッキリと台詞でロッキーは「愛していた」と発言しているのだ。

 シリーズを通して試合前のトレーニングシーンは見せ場であるが、『4』は最新の科学を取り入れるドラゴと、有り得ない程原始的な手法のロッキーとの対比を見せようとするあまり盛り上がりに欠けていた。今回はここにも手を加えて、僅かながらオリジナルよりも良くなっている。

 1作目はエイドリアンの愛を獲得するまでの「恋愛映画」だったが(主人公がたまたまボクサーだっただけで、勝負に勝ったのはアポロ)本作も不可能を可能にした「恋愛映画」と言えるだろう(今回の愛の対象は無論アポロ・クリード)。ロッキーが絶対的な不利を、理不尽なまでの愛の力で覆すさまは感動的だ。本来こんなに殴り合っていたら2人とも死んでいるし、そもそも1発急所に入った時点でノックアウトされているはずだが、15ラウンドまで死闘は続くのだ。これが映画だ。

 そして何より驚いたのは雌雄を決した後、ロッキーのスピーチを受けてゴルビーが立腹し退場したことだ。こんなアナザーカットを撮っていたとは。これはスタローン自身が監督だけでなく、脚本までを手がけていたからこそだろう。そして、これが正解だ。

『トップガン マーヴェリック』は傑作・名作と呼べる作品では決してなかったが「俺たちが観たかった続編はこれだ」と喝采を叫べる実に良い作品だった。『ロッキー vs ドラゴ』も「俺たちが観たかったロッキー4はこれだ」と思える作品に仕上がっているので、ロッキー・チルドレンのあなたは、必ず見届けなければならないだろう。めでたし、めでたし。


 

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